給湯室のヘッドホンから聞こえてくるものは…? 過去の経験・記憶からの“想像”が不気味さを生み出す「行方不明展」

気鋭のホラー作家・梨、株式会社闇、テレビ東京の大森時生が手がける話題の展覧会「行方不明展」。7月25日(金)からスタートし、最初の週末は全て予約で埋まるなど、早くも話題を集めています。会場に並ぶ“行方不明”にまつわる展示物はすべてフィクションであるはずなのに、どこか本当にあった出来事のような不気味さを感じました。その不気味さの正体とは?今回は展示の一部を紹介しながら、ライターの視点でその体験を紐解いていきます。
黒く塗りつぶされた文字の意味は?

会場内には、紙に書かれた多くの“情報”が展示されています。行方不明者を探す張り紙や手紙、メモなどが並び、その多くは、黒く塗りつぶされている箇所があります。写真にある行方不明者情報では、名前、失踪した年、生年、大学名、警察署などが隠されています。つまり個人を特定できる情報ですが、逆にそれが、どこか自分の暮らす街や知っている場所で起こった出来事のようなリアリティを感じさせるのです。

展示と一緒に必ず読んでおきたいのがキャプションです。書かれた物語を読むことで、不気味さがより一層深まります。

例えばこちらはちぎったノートに書かれた手紙で、「和ニ市」という地名は伏せられておらず、書き手の行動や誰かの名前らしき部分だけが塗りつぶされています。キャプションから、「和ニ市」は存在しない地名だと知ると、塗りつぶされた箇所に入る言葉を想像し、書き手がこの手紙を書いた時の切迫した状況が頭に思い浮かんでくるのです。
覗き込めば、何かが見えてきそうな感覚に

こちらは、ある空き家の中庭にあったという、まるで底なし沼のような子ども用プール。リアルな質感と空間に漂う気配に、「こわっ…」と声が出てしまう展示です。中を覗き込むと何かが見えてきそうで、思わず立ち止まってしまいました。

さらに、会場となっているビルの給湯室もそのまま展示の一部として使われていました。古い設備と薄暗い明かりが、まさに「行方不明展」の雰囲気にぴったり。奥へ進むとヘッドホンがあり、いまだ行方がわかっていない男性のボイスメッセージを聴くことができます。彼はいったいどこへ消えたのか?そして、何を語っているのでしょう…。

かつて犬が飼われていたという犬小屋の展示では、ある時その犬が小屋から動かなくなり、外をきょろきょろと見回していたというエピソードが紹介されています。小屋を覗き込むと、実際にはいないはずの犬の気配を感じてしまい、犬が見ていた目線の先を探してしまう自分がいました。
匂いの記憶までも、不気味さに変わる

こちらは糸がほつれ、ボロボロになった枕。ある男性が30年にわたり「誰かの匂いがする」と感じて使い続けたそうです。そこには、見る人それぞれの記憶から浮かび上がる“誰か”の気配が漂っているようでした。ですがもし、その“誰か”が存在しない人物だったとしたらどうでしょうか…。

また、実際に匂いを嗅ぐことができる展示もあります。これはある家の大掃除中に見つかった、家族の誰も使っていなかったという古い香水。蓋を取って香りを確かめると、使っていた人の姿が遠い記憶の中から思い出されるような、不思議な感覚に包まれます。
自分のこれまでの経験・記憶が恐怖に変わる?

「行方不明マニュアル」とされるVHSのビデオテープ映像。もしかすると、家のどこかに放置され、もう見られなくなったビデオテープの中にあるかもしれないような質感で、「行方不明」になりたいと思う人たちにその方法を語りかけます。最後まで見ると、それで終わりではなく、その先どうするかは自分に課せられているのではないか?と感じさせる内容でした。

消された文字に浮かぶ言葉。いないはずなのに「いる」と感じる気配。どこかで嗅いだことのあるような匂い。展示を見ているうちに、これまでの自分の経験や記憶が想像へとつながり、フィクションが現実であるように錯覚していく。けれどその不気味な世界もまた、展示の空間だけだけに存在しており、本当の現実ではないのです。
「行方不明展」でフィクションと現実の狭間を行き来する、不思議で不気味な世界を体感してください。
開催概要
□イベント名|行方不明展 大阪
□会期|2025年7月25日(金)~9月28日(日)10時~19時※最終入場18時30分
□会場|谷口悦第2ビル1階(大阪市中央区久太郎町3丁目5-26)Osaka Metro本町駅12番出口すぐ
□主催|テレビ大阪株式会社 株式会社ディヴォ―ション
□企画|梨 株式会社闇 大森時生(テレビ東京)
□HP|https://www.tv-osaka.co.jp/event/yukuefumei

↑アクセスMAP