【あらすじ全65話イッキ読み】『新・愛の嵐』|時代や運命に翻弄されながら、身分の差を越えて純愛を貫く男女の物語|テレビ大阪 月~金曜あさ9時30分放送中!

番組情報
『新・愛の嵐』全65話
月~金曜 あさ9時30分放送中
あらすじ
昭和2年、甲州の大地主・三枝家で何不自由なく育てられた娘・ひかるは、父・伝衛門が横浜から連れてきた孤児で使用人の 鳥居猛にやがて惹かれていく。しかし戦争をはさんだ激動の時代が、二人の運命の歯車を狂わせてゆく…。
キャスト
三枝ひかる / 藤谷美紀
鳥居 猛 / 要 潤
大河原勇作 / 石原良純
大河原秀子 / 北原奈々子
ほか
≪あらすじ全65話イッキ読み≫ #1~#10
【#1】
恐慌の足音が聞こえる昭和二年、山梨県白部村。三枝家は数十軒の小作農家を抱えた大地主で当主は伝衛門。妻・絹との間に、文彦(11)とひかる(7)がいる。伝衛門はしばしば横浜へ通っていた。そこには馴染みの芸者・琴子がいた。その夜も伝衛門は琴子の家で過ごしていた。すると、腹をすかせた一人の少年が台所に忍び込んでくる。伝衛門は少年に食事を与えるが、翌日、帰りの汽車の中へ少年がついて来る。少年は天涯孤独で、名前はないという。歳は九歳だった。野生児のように乱暴で粗雑だが、なぜか憎めないその少年を、伝衛門は屋敷に連れて帰る。
【#2】
伝衛門は横浜から名もない孤児を連れて帰る。絹は嫌がり、子どもたちも薄気味悪がる。が、伝衛門は少年の目が三年前に亡くなった次男の猛の目に似ていると思い、親近感を持つ。少年は木に登ったり、横浜で覚えた英語の歌を口ずさんだりする。猛も木登りが得意で、英語の歌が好きだったことから、ひかるは少年を猛と呼ぶ。女衒の欣造が三枝家に来る。伝衛門は欣造に少年の身元調べを頼む。一方、絹は欣造から琴子のことを聞き出す。少年が伝衛門と琴子の子どもかもしれない、と疑う欣造に、絹は動揺する。伝衛門の指示で、少年は正式に猛と名付けられる。
【#3】
三枝家に連れてこられた少年は、猛と命名されるが、伝衛門以外は誰も歓迎しなかった。猛が怪我をした野ウサギを拾ってくる。やさしく手当てをする猛に、協力するひかる。使用人たちは猛を琴子の子どもと思い、追い出そうとする。伝衛門は猛をずっと自分の手元に置いておきたかったが、絹に反対され、猛の身元を探すため、再び横浜へ連れて行く。猛はウサギの世話をひかるに頼む。文彦はウサギを捨てようとするが、猛が帰ってくるのを待つひかるは、必死にウサギを守る。欣造が、猛は孤児院を脱走した鳥居捨松だということをつきとめる。それを知られた猛は姿を消す。
【#4】
姿を消した猛の行方を、伝衛門は必死に探し回る。ひかるも猛のことを心配するが、そんなひかるの前に猛がひょっこり姿を現す。文彦は遊び仲間たちと猛に襲いかかり、猛を蔑むような発言をする。怒った伝衛門は文彦を殴り飛ばす。伝衛門は再び、猛を三枝家に入れる。翌朝、伝衛門は小作人たちが働いている葡萄畑を猛に案内しながら、猛との出会いは運命に導かれたのだと語る。猛は自分が鎌倉の鶴岡八幡宮の大鳥居の下に捨てられていて、「鳥居捨松」と名付けられたことを打ち明ける。その日、伝衛門の金の懐中時計がなくなり、猛に疑いがかかる。
【#5】
伝衛門の懐中時計がなくなり、猛に疑いがかかる。文彦の不審な行動を見ていたひかるは、猛に知らせる。猛は時計を見つけるが、文彦に、自分が罪をかぶるから三枝家にいられるようにしてほしい、と取引を持ちかける。そのやりとりを、絹が聞いていた。猛は伝衛門に、自分が金時計を盗んだと申し出る。そのためにひどい体罰を受けるが、ひたすら堪える。絹は一部始終を伝衛門に伝える。そんな矢先、猛のいた孤児院の園長・黒岩が、猛の母親が見つかったと訪ねてくる。
【#6】
人買いに連れ去られた猛をひかるが目撃。伝衛門に知らせる。伝衛門は人買いの手から猛を買い戻し、家族の一員として迎え入れる。文彦は猛に嫉妬。番小屋で探し物をする猛の姿を見つけると、こっそり棚の支柱を外す。そこにはひかるもいて、猛は崩れ落ちる棚から、とっさにひかるを庇う。その猛の背中に、落ちてきた鎌が突き刺さる。猛は大怪我を負う。文彦が支柱を外すのを見ていたひかるは憤慨するが、猛は誰にも言わないよう口止めをする。ひかるは自分を助けてくれた猛に感謝する。猛もひかるのおかげで人買いから助けられたと礼を言う。
【#7】
ある日、ひかるが猛から貰った大事な貝殻を、文彦がわざと踏み潰す。がっかりしたひかるは、海へ行こうと家を出る。猛はひかるを追いかけ、一緒に列車に乗る。途中、無賃乗車を見つかりそうになり、横浜の琴子に助けを求める。猛はひかるに初めて海を見せてやる。ひかるは感激して涙を浮かべる。その頃、三枝家では、小作人たち総出で二人の行方を探し回っていた。翌日、琴子は子どもたちを連れて、三枝家を訪ねる。絹は琴子を客としてもてなし、伝衛門と仲のいいところを見せつける。嫉妬を感じた琴子は、自分も負けまいと伝衛門の世話をする。
【#8】
伝衛門をめぐって、絹と琴子が見えない火花を散らす。絹は琴子をもてなすためにわざわざ台所に立ち、食事も一緒にする。どうなることかと、不安そうに見守る使用人たち。翌日、猛は文彦から風呂を焚くように命令される。水はすでに入っているというので薪をくべるが、実は嘘で、風呂の空焚きから危うく火事を起こしそうになる。一部始終を見ていた琴子は、絹に真相を話すが、絹はあくまでも文彦をかばう。伝衛門はそんな絹を非難。絹も琴子も自分にとっては欠かすことのできない存在だから意地を張り合うな、と忠告する。絹は、「心の秤が壊れた」と言って、家を出て行く。
【#9】
家を出た絹は行くあてもなくさまよい、光明寺の山海和尚のもとにたどり着く。その頃、琴子は伝衛門との別れを決意。必死に引き止める伝衛門をふりきって、横浜へ帰っていく。和尚と話して気持ちの落ちついた絹は、三枝家へ帰ろうとする。そこへ、猛が迎えにくる。伝衛門の計らいで、猛は学校へ行くことになる。絹が真新しい学生帽を買ってくれたので、思わず、嬉し泣きしてしまう。張り切って家を出た猛の前に、文彦と小作の息子・太郎、吾作、孝一が立ちはだかる。太郎は猛の帽子を小刀で切り刻み、文彦は教科書を田んぼにばらまく。その日、猛は学校へ行かなかった。
【#10】
文彦のいじめで学校へ行けなかった猛は、学校から帰った文彦に襲いかかる。伝衛門に取り押さえられるが、怒りの理由は言わなかった。ひかるはずたずたにされた猛の帽子を見つけ、文彦の仕業だと察する。伝衛門と絹もそれを知り、心を痛める。猛の怒りはおさまらず、ついに包丁まで持ち出す。それを見た和尚は叱りつけ、寺の松の木に猛を吊るす。和尚の忠告によって、伝衛門は文彦に水行をさせる。三枝家の跡継ぎとして、もっと強い人間になるようにと。ひかるは寺に駆けつけ、手の爪が潰れるのもかまわず、吊るされた猛の縄をほどく。
#11~#20
【#11】
七年の時が流れて、昭和九年夏。ひかるは十四歳。女学校の一年生になって、初めての夏休みだ。猛は十六歳。三枝家の使用人として働いていた。伝衛門は一年前、郊外にアトリエを造り、ひかるはそこで男爵令嬢・崇子からバイオリンを習っていた。猛はひかるの練習に付き添うが、自分の立場をわきまえ、へりくだった態度を崩さない。文彦は高等学校に進み、弓道部に入っていた。友人の友春をよく家へ連れてくるが、ひかるは知春からラブレターを貰う。ある日、女郎屋に売られた農家の娘・お花が三枝家に逃げ込んでくる。伝衛門はお花を助け、屋敷で働かせる。
【#12】
伝衛門は村のために、灌漑用水路の工事を進めていた。猛は予備調査班の責任者に抜擢される。文彦が無断外泊。翌日、女給の織江に連れられて、泥酔して帰ってくる。伝衛門は烈火のごとく怒るが、絹はかばう。ひかると猛の仲睦まじい姿を目撃した絹が、猛にひかるのバイオリン練習に付き添うのを禁じる。猛は改めて自分の立場を思い知らされるが、仕事に集中できず、練習に出かけるひかるの後を追いかけてしまう。練習が終わり猛が仕事に戻ろうとすると、ひかるが話があるとひきとめる。吾作が気をきかせて、水路の発動機を動かすのをかってでるが、まもなく大爆音がこだまする。
【#13】
猛の代わりに発動機を回そうとした吾作が事故を起こし、腕に大やけどをする。そのとき、猛とひかるが番小屋にいたことを知った絹は、ひかるに猛と必要以上に親しくしないよう言い渡す。伝衛門も己の分をわきまえるよう猛に忠告する。ある夜、伝衛門と絹は温泉へ泊まりにいく。すると、弓道部の合宿へ行っているはずの文彦が同じ宿で織江と泊まっていた。怒った伝衛門は文彦を勘当。絹もついに、文彦を見放す。その頃、ひかるは一人で甲府へ芝居を見にいっていた。猛はひかるを連れ帰ろうとするが、アトリエに引きとめられる。そこへ、刑事たちが乗り込んでくる。
【#14】
甲府で猛とひかるは刑事に目をつけられ、風俗紊乱罪で逮捕されそうになる。崇子が毅然とした態度で、刑事たちを追い払ってくれるが、事件のことが伝衛門に知られ、二人への監視の目はますます厳しくなる。ある日、知春からひかるに、ハイキングへの誘いの電話がかかる。ひかるは断るために出かけていく。文彦は光明寺に身を寄せていた。絹が訪ねてきたのを知り、心を入れ替えて修行するふりをするが、猛にはありのままの自分を見せ、恨みをぶつける。まもなく、天候が急変、激しい雨がたたきつける。ひかるは知春と番小屋で雨宿りするはめになる。ひかるは知春を避けるが、無理矢理抱きしめられる。
【#15】
雨宿りした番小屋で、ひかるは知春に乱暴されそうになる。猛が駆けつけ、知春を殴りつける。翌日、知春の父・県議会の副議長をしている古川が三枝家に怒鳴り込んでくる。知春が猛に怪我をさせられたと憤慨する。ひかるは真実を話して、猛の濡れ衣を晴らす。
夜、三枝家では、崇子を夕食に招く。文彦も勘当を許され、仲間に加わる。崇子が持ってきたワインについて話しがはずみ、猛はワインづくりに興味を示す。しばらくして猛が番小屋で仕事をしていると、崇子がやってくる。猛とひかるのよき理解者だった崇子だが、突然、猛を誘惑しようとする。そこへ、ひかるが……。
【#16】
猛を誘惑するのに失敗した崇子は自分でブラウスを引きちぎり、悲鳴をあげる。駆けつけたひかるは猛の弁解を許さず「穢らわしい」と軽蔑の目を向ける。猛は伝衛門に身の潔白を訴える。伝衛門は崇子から事情を聞こうとするが崇子はとりつく島もなく帰っていく。猛は蔵に閉じ込められる。文彦がやってきて、猛をからかう。かっとなった猛は文彦に殴りかかり、罰として鎖につながれたうえ、一週間の謹慎を言い渡される。その日から、猛は一言も話さず、何も食べようとしなかった。ひかるは猛を穢らわしいと言ったことを後悔して、自分の部屋に閉じこもり、食事も拒否する。
【#17】
崇子を襲ったと疑われ、傷ついた猛は、抗議の断食を始める。ひかるも猛のまねをして、一切の食事を拒否する。そんなとき、文彦が町の酒場で、偶然崇子と出会う。崇子は裏切られた過去の恋につい
て語り、猛は何もしていないことを打ち明ける。文彦は両親に猛の無実を伝える。絹は自分の手で握り飯をこしらえると、猛のところへ持っていき、疑っていたことを謝る。猛はその握り飯をひかるのもとへ届け、一緒に頬張る。灌漑工事の現場で落盤事故が起こり、小作人が一人生き埋めになる。知らせを聞いた伝衛門は現場に駆けつけ、猛も急いでその後を追う。
【#18】
落盤事故で怪我人が出るが、猛の機敏な救出作業のおかげで、大事に至らずにすむ。伝衛門は猛を頼もしく思う一方、文彦のふがいなさに情けなくなる。断食の疲れから猛が熱を出して倒れる。親身に看病するお花の姿を見て、文彦はお花が猛に好意を寄せているのを知る。伝衛門は猛を現場の補佐役に任命する。そして、番小屋で寝泊りするよう言い渡す。絹は猛が屋敷からいなくなりほっとする。が、ひかるは両親が猛を追い出したと思い、憮然とする。その夜、ひかるはこっそり番小屋を訪ねる。戸を叩き、猛に開けるよう声をかけるが……。
【#19】
ひかるは猛に会いたくて番小屋を訪ねるが、猛は心を鬼にして会うのを拒否する。ひかるは猛にラブレターを書き、お花に届けてもらう。こっそり手紙を読んだお花は、二つに引き裂いて握りつぶす。文彦は猛を酒場に誘い、無理矢理酒を飲ませる。猛は酔いつぶれ、文彦は猛がお花から貰った手拭いを持ち去る。文彦はその足でお花の部屋に忍び込み、猛と一緒にしてやるから自分の言うことをきけとお花に襲いかかる。翌日、お花の父親・太吉が、猛とお花が結婚の契りを交わした、と伝衛門を訪ねてくる。それを聞いたひかるは気絶する。
【#20】
お花は、猛と契りを交わしたことを主張。その証として例の手拭いを見せる。文彦の陰謀だと知った猛は、怒りを爆発させる。が、ひかるが女学校を転校して、東京の寄宿舎に入ることを聞き、すべてをあきらめ、お花と結婚する決心をする。東京へ行く前夜、ひかるはお花の嘘を見抜くが、お花が哀れで、自分から身を引く。お花は関係を持ったのは文彦だったことを告白。居たたまれずに、姿を消す。翌日、ひかるの壮行会が盛大に開かれている中、猛が駆けつける。二人は思い出の横浜の海へ行く。猛は、仕事に打ち込み立派な男になるから、それまで待っていてほしい、とひかるに告げる。
#21~#30
【#21】
昭和17年、日本は太平洋戦争の真っ只中にあった。上京して8年、ひかるが学校をやめて、突然帰ってくる。村の子どもたちに歌を教えたいという。ひかるは猛との再会を喜び、猛も美しく成長したひかるに胸をふるわせる。ひかるの将来を心配した伝衛門が、ひかるに強引に見合いをさせる。相手は副知事の息子で海軍士官の山下。ひかるは、結婚はまだ早い、と正直な気持ちを伝えるが、山下はそんなひかるに好感を持つ。見合いが行われた旅館「大河原」の主人で、大河原商会を築き上げた勇作がひかるに一目惚れ。必ずひかるを自分のものにしてみせる、と母親の静子に断言する。
【#22】
ひかるはしぶしぶ見合いをするが乗り気だった先方が断ってくる。猛との悪い噂のせいではないか、と勘ぐる絹。実は勇作が陰で糸を引いていた。知人の陸軍中佐岩原に頼んで、山下を脅迫したのだ。まもなく、勇作がひかるに会いにくる。勇作は猛に「ひかるを嫁にする」と宣言する。アトリエでひかるが子どもたちに歌を教えていると、壮士風の男たちが因縁をつけてきて暴れまわる。そこへ、勇作が飛び込んできて、男たちを追い払う。実はそれも勇作の策略だった。猛はひかるに、勇作は信用できない、と忠告するが、ひかるは耳を貸さない。
【#23】
勇作からひかるに、高価なダイヤのネックレスが届けられる。ひかるはすぐに、ネックレスを返しにいくが、勇作に誘惑されそうになる。猛が駆けつけ、事なきを得る。勇作は小説家志望の文彦に近づき、味方につけようとする。文彦は自分を主人公にした小説の話をして、ひかると猛が恋をしていることを勇作に教える。三枝家は灌漑工事に莫大な投資をした結果、経済的にかなり逼迫していた。生活に苦しい小作たちを救うために、伝衛門は家屋敷を担保にいれて海運業に乗り出す決意をする。猛は危惧しながらも、伝衛門に協力する。そんなとき、ひかるは勇作に強引に唇を奪われる。
【#24】
勇作が静子とともに三枝家に乗り込んできて、ひかるに結婚を申し込む。伝衛門はひかるの気持ちを確かめた上で、にべもなく追い返す。まもなく、三枝家の命運を賭けた事業計画が始まる。猛は有能な番頭として伝衛門の支えになるが、文彦は相変わらず文学に現を抜かしていた。愛想をつかした伝衛門は、猛に三枝家を継がせることを考える。が、絹はひかると猛の結婚には絶対反対だった。そんなとき、大河原商会から借金をした小作人たちが、次つぎと夜逃げをする。伝衛門は苦しいながらも借金を肩代わりしようとするが、法外な利息で太刀打ちできない。
【#25】
小作人たちの借金を肩代わりしようとする伝衛門に、勇作が元金のみの返済でいいときりだす。訝しく思いながらも、伝衛門は借金を全て清算。勇作はさらに、返済金の半分を新事業へのはなむけとして差し出す。恐ろしくなったひかるはそれを叩き返す。船の買い付けのため、伝衛門は猛とともに横浜へ出かける。文彦は朝帰りのあげく、伝衛門の事業にケチをつける。その日、勇作が陸軍中佐岩原を連れてひかるに会いにくる。大陸へ出発する甲府の連隊の壮行会で、ひかるにバイオリンを弾いてほしいという。ひかるは承諾。二日後の夜、壮行会が開かれる勇作の旅館へ一人で出かけていく。
【#26】
勇作からバイオリンの演奏を頼まれたひかるは、単身大河原旅館へ出かけていく。そして、乱痴気騒ぎになっている軍隊の壮行会に顔を出し、「菩提樹」を演奏し岩原中佐はひかるに軍刀を突きつけ、軍歌を演奏するよう命令。ひかるは従わず、「菩提樹」を弾き始める。その音色の美しさに将校たちは心を奪われ、啜り泣きさえ漏れる。演奏を終え帰ろうとしたひかるを静子が引きとめ、勇作との仲を取り持とうとする。身の危険を感じたひかるは旅館を飛び出す。翌朝、横浜から猛が急ぎ帰宅。勇作に、ひかるは自分が守ってみせる、と宣言する。
【#27】
三枝家の海運業は船「白部丸」も手に入り、初航海に向かって着々と準備が進んでいた。目下の心配は、鉱物資源買い付けのための資金の融資が下りるかどうかだ。そんなとき、文彦が伝衛門に札束を差し出す。伝衛門は受け取らないが、猛の忠告によって、文彦の意見を聞く。文彦は危険な海運業から手を引くよう主張。さらに、三枝家の維持のため、小作人を切り捨てるべきだ、と力説する。伝衛門は烈火のごとく怒り、絹も今度という今度は文彦に失望。ひかると猛を結婚させたほうがいいのかもしれない、と思い悩む。翌日、銀行から突然、融資の凍結を言い渡される。
【#28】
いよいよ出航が目前に迫った矢先、銀行から突然、融資の凍結を宣告される。絶望する伝衛門に、文彦は大河原商会からの融資を勧める。勇作の罠だ、とひかるは反対するが、小作人たちのことを思うと、伝衛門の心は揺れる。猛は大河原商会に乗り込み、勇作につかみかかる。そこへ、伝衛門が飛び込んできて、勇作に融資を申し込む。勇作は伝衛門に土下座をすることを強要。伝衛門は床に頭を擦りつけて、融資を頼み込む。翌日、伝衛門は土地と屋敷の権利書を勇作に渡し、金を借りる。安心したのも束の間、出航許可が突然、取り消される。
【#29】
またしても勇作の妨害工作によって、「白部丸」が出航できなくなる。追いつめられた伝衛門は、軍の出航停止命令に逆らって、船を出すことを決意。自分に万一のことが起こった場合に備えて、猛を三枝家の後継者に指名する。猛は三枝家を継ぐのは文彦だと主張、自分はその支えになりたいと。翌朝、「白部丸」は横浜港を出港する。伝衛門は胸をなでおろすが、憲兵が屋敷に踏み込んできて、有無を言わせず連行される。猛は勇作に土下座して、伝衛門を助けてほしいと訴える。勇作は、ひかるを自分に譲ってくれれば、伝衛門を釈放させる橋渡しをしてもよい、と狡猾な笑いを浮かべる。
【#30】
文彦が伝衛門を救うために、出航した船を横浜へ呼び戻すべきだ、と絹に訴える。長男としての威厳を見せつけようとしたのだが、実は勇作に操られていた。伝衛門の気持ちを思いやって、猛は反対。絹も猛に味方する。文彦の気持ちはますます荒む。一方、猛も自分が本当に三枝家を継いでいいのか苦悩する。まもなく、絹の必死の嘆願のおかげで、伝衛門が無事釈放される。迷いから吹っ切れた猛は、改めてひかるに結婚を申し込む。久しぶりに三枝家に笑いが戻った矢先、白部丸が敵の攻撃を受けて沈没した、と連絡が……。
#31~#40
【#31】
白部丸が沈没したという知らせを受け、伝衛門は事実を確かめるため、横浜へ行く。その日のうちに、沈没の噂は町中に広まり、小作人たちの間に動揺が広がる。そして、債権者が三枝家に押しかけてくる。洋服や宝石、ひかるの大切なバイオリンまで押収しようとするので、猛は抵抗する。そこへ、勇作が現れ、借金は大河原商会が立て替えるといって、債権者たちを追い返す。文彦は、三枝家を破産から救うためには勇作に頼るしかない、と絹に忠告する。絹は伝衛門からの連絡に一縷の望みを託す。二日後、伝衛門が憔悴しきった様子で屋敷に帰ってくる。
【#32】
横浜から戻った伝衛門は、白部丸の沈没を確認したことを告げる。ひかるは号泣し、絹も初めて取り乱した姿を見せる。銀行の担保に入っていた小作人たちの土地が、大河原商会に買い占められる。動揺する伝衛門に、文彦は勇作の気配りだと言い、勇作は信頼できる人物だと訴える。伝衛門は小作人たちが今までどおり畑を使えるよう勇作に頼みに行く。勇作はひかるとの結婚を条件に出し、それが受け入れられなければ、畑は潰すと脅迫する。それを知った猛は、自分の命を買ってほしいと勇作に土下座する。勇作は、ひかるのことを諦めるよう猛に命令する。
【#33】
小作人たちを救うために、伝衛門はひかるに勇作のもとへ嫁ぐよう命令する。ひかるは衝撃を受けるが、猛も伝衛門と同じ意見だったので、泣く泣く結婚の決意をする。猛は自分の無力さが情けなくて号泣する。伝衛門も絹もひかるが不憫で、居たたまれない。ひかるは勇作に承諾の返事をする。但し、条件として、猛を三枝家の後継者にすることを約束させる。翌日、勇作は猛を呼び出し、大河原商会で働かないかときりだす。猛が断ると、この土地から出て行くよう脅迫する。その夜、猛は酒場で、上海帰りの若い女・秀子と出会う。そのときは知らなかったが、秀子は勇作の妹だった。
【#34】
ひかるが結婚の承諾をしてから二日後、三枝家で結納の儀式が行われる。市議会議長の副島を仲人に、勇作、両親、妹の秀子が列席する。終始にこやかな勇作に対して、ひかるは氷のような表情でうつむいたままだった。そんなひかるを見て、秀子はひかるはこの結婚に乗り気ではないのだろうかと疑う。結納が終わり、勇作は夜の身内の祝宴にひかるを招待して帰る。夕方、猛は伝衛門に暇乞いをする。ひかるが勇作の家へ出かけている間に出て行くという。伝衛門は引き止めるが、猛の決意は固かった。絹は、猛が本当の子どもだったらどんなに良かったろう、と嗚咽する。
【#35】
ひかるは大河原家の身内の祝宴に出席する。勇作は上機嫌だったが酔った従兄弟の遠山が、大河原家の隠された汚い部分を次つぎと暴露する。さらに、勇作の父・政之助はひかるに、結婚をやめるよう忠告する。ひかるが帰宅すると、猛がいなくなっていた。ひかるは半狂乱になって猛を探し回り、アトリエで猛を見つける。別れを告げる猛に、ひかるは自分を連れて逃げてほしいとすがりつく。猛も自分の気持ちに正直になって、ひかると村を出る決心をする。が、追手の小作人たちに二人は行く手を阻まれ、ひかるは無理矢理、家へ連れ戻される。
【#36】
ひかるの結婚式の日がくる。ひかるを迎えにきた勇作は、その輝くばかりの美しさに目を見張り、勝ち誇ったように二人で猛に挨拶にいく。その日猛は村を出るつもりだった。が、勇作への反発心や、急に気弱になった伝衛門のことが気がかりで、もう一度三枝家で働かせてもらうことに。その夜、猛は秀子からバーへ誘われ、誘惑されそうになる。猛は怒って帰るが、入れ違いに文彦がやってきて、猛がひかると駆け落ちしようとしたことを、秀子にもらす。秀子はそれを勇作に伝え、猛とひかるがあたかも関係を持ったかのようにあおりたてる。
【#37】
ひかると猛が駆け落ちしようとしたのを知った勇作は、掌を返したようにひかるに冷淡になる。ひかるはショックを受け、新婚第一日目から暗い気持ちになる。その頃猛はひかるへの思いを吹っ切り、三枝家のために再出発しようとしていた。伝衛門はそんな猛に金庫と倉庫の鍵を預け、帳簿の整理を任せる。伝衛門の態度に不吉なものを感じた猛は、外出した伝衛門の行方を追う。そして、和尚の寺で、偶然ひかると顔を合わせる。二人は伝衛門の行方を探し回り、墓地へ駆けつける。すると三枝家の墓の前で自害している伝衛門の姿が……。ひかるは伝衛門を抱き起こすが、すでに絶命していた。
【#38】
伝衛門が自殺。通夜の席に訪れた勇作は、伝衛門との約束を破って小作人たちの田畑を自分の自由にする、と宣言する。怒り狂った猛は日本刀で勇作に切りかかるが、ひかるに止められる。深夜、絹が後追い自殺を図る。すんでのことで猛が助けるが、絹の悲しみは深い。翌日の葬儀、勇作に命令されて、ひかるは出席できなかった。ひかるは離婚届を書く。猛は勇作に、自分の命と引き替えに田畑を小作人に返してほしい、と訴える。が、勇作はあざ笑い、三枝家の土地を甲府連隊の練兵場に提供したことを告げる。当然、屋敷も取り壊しだと……。
【#39】
三枝家の田畑が練兵場になると聞き、不安にかられた女中たちが大河原の家へ抗議に押しかける。ひかるが騒ぎをおさめるが、女中の一人・お滝が勇作の通報によって、警察に逮捕される。猛への憎しみを燃やす勇作に、ひかるは素直に猛への思いを打ち明ける。そして、その思いを消し、勇作を愛することを誓うが、勇作は信用しない。勇作を信じていた文彦は勇作の真意を確かめにいく。勇作は冷酷な本性を現し、文彦を侮辱する。お滝を迎えに行った警察で、猛はひかると顔を合わせる。ひかるは、練兵場のことは必ずやめさせるから自分のことは忘れてほしい、と決然と猛に告げる。
【#40】
ひかるは勇作の妻として生きる覚悟を証明するために、自ら勇作の胸に飛び込んでいく。翌日、勇作が練兵場の話は白紙に戻した、と三枝家に伝えにくる。勇作の突然の心変わりの原因を察した猛は、勇作を倒すため村を出ようとする。その矢先猛に召集令状が来る。入隊は明日なので、絹は急いでひかるに知らせる。その夜ひかるは猛に会いにいこうとするが、勇作に見つかり、脅迫される。翌日、猛は出征していく。二年後-。ひかるは猛がサイパンに向かったことを聞かされていた。ある日、ラジオのニュースで、サイパンの部隊が全員壮絶な戦死をしたと……。
#41~#50
【#41】
昭和二十五年、ひかるが勇作と結婚して八年が過ぎた。義父の政之助は亡くなり、静子、秀子とともに三枝の屋敷に移り住んでいる。絹は勇作を嫌い、和尚のもとに身を寄せていた。大河原商会はひかるの手腕によって敗戦後の危機を乗り越え、折しも勃発した朝鮮戦争によって更なる発展を目論んでいた。そんなある日、大河原の土地を高値で買いたいと言ってきた東京の「北西興産」の社長から、勇作夫妻に会食の招待状が届く。噂によると、その社長はかなりあくどい人物らしい。勇作に急用ができ、ひかるは一人でその男に会いに行く。現れた人物を見て、ひかるは驚愕。戦死したはずの猛だった。
【#42】
戦死したはずの猛が北西興産の社長として、ひかるの前に現れる。ひかるは喜ぶが、勇作への復讐の鬼と化した猛に、戦慄を覚える。ひかるは猛のことは勇作に話さず、北西興産とは関わらないほうがいい、と忠告する。翌日、北西興産の社長から勇作に会いたいと電話がかかってくる。ひかるは猛を呼び出し、このまま東京へ帰ってほしい、と頼む。猛は勇作との約束をすっぽかす。その夜、勇作は秀子に酒場「アザミ」を経営させるため、オーナーに会いに行く。すると、北西興産の社長が先に交渉中だという。その男が猛だったので、勇作は呆然とする。
【#43】
猛が生きているのを知った勇作は嫉妬にかられ、ひかるに外出禁止令を出す。ひかるは妻としての自分を信じてほしい、と訴える。一方、猛を好きだった秀子は胸をときめかせ、ひかるに猛を好きになってもいいか、と聞く。猛が大河原商会へ乗り込んでくる。勇作への恨みだけで生き抜いてきた猛は、大河原商会を必ず潰す、と宣戦布告する。猛は伝衛門の墓に参り、改めて勇作への復讐を誓う。「三枝家を取り戻す」という猛に、絹は感激。が、和尚は変貌した猛に、危惧を覚える。その夜、勇作の取引先の製鉄会社が突然、取引停止を言ってくる。猛の仕業だった。
【#44】
早朝、猛が泥酔した秀子を連れて、勇作のもとへやってくる。自分がオーナーになった酒場で酔いつぶれてしまったという。勇作はとりつく島もなく猛を追い返すが、秀子は猛への思いを語り、勇作が猛と争うなら自分は猛の味方をする、と兄に反旗を翻す。その日、終戦以降、音信不通だった文彦が、友子という内縁の妻を連れて、勇作の前に現れる。小説家としてなかなか芽の出ない文彦は、いかにもみすぼらしい風情だった。勇作は文彦を絹に会わせる。絹は文彦の不甲斐なさに腹を立て、冷淡な態度をとる。勇作は文彦と友子を家に入れる。ひかるはアトリエで偶然、猛と顔を合わせる。
【#45】
アトリエでひかるは猛と偶然会う。復讐の鬼に変貌してしまった猛に、ひかるは失望。決別宣言をする。そんな二人を秀子が目撃。勇作に二人のことをセンセーショナルに告げ口する。逆上した勇作はひかるを家から叩き出す。ひかるは絹のもとへ行く。すると、文彦も来ていて、絹は家族一緒にここで暮そうと提案する、そして、三枝家を取り戻そうと。が、ひかるは猛の復讐を非難。勇作のもとに戻る。勇作もひかるを誤解したことを謝る。秀子が猛から誘われたといって、家を出て行く。ひかるは秀子を連れ戻そうとするが、猛はひかるに見せつけるように、秀子に激しく口づけをする。
【#46】
猛と暮らすために家を出た秀子をひかるは連れ戻しにいく。猛の復讐の道具にされると思ったのだが、猛は秀子を愛しているという。そして、いずれ結婚するつもりだと。勇作は長年の夢だったレジャーランド建設のために、駅前の一等地を買収しようとしていた。公開入札に向けて、既に根回しもすんでいた。猛がそれに目をつけ、部下の佐古田と勇作の入札額について話し合う。その話を耳にした秀子はこっそり勇作の部屋に忍び込み、金庫の中にあった書類から土地の入札金額を調べあげる。たとえそれが兄を破滅に追いこもうとも、猛のためならかまわなかった。
【#47】
入札の当日。勇作の手に入るはずだった土地が、猛の北西興産にまんまと持っていかれる。秀子が入札情報を流したのを知ったひかるは、秀子を利用している猛を非難しにいく。が、猛は、これで大河原商会は終わりだ、と平然としていた。そこへ、三ヵ月前に猛に倒産させられたという男が、ナイフを持って仕返しにくる。とっさにひかるが猛をかばい、自分の腕に怪我をする。猛はひかるに駆け寄り、無言で傷口の手当てをする。勇作の取引銀行が、貸し付けた金を月末までに全額返済するよう連絡してくる。狼狽する勇作に、猛が途方もない取引を持ちかけてくる。
【#48】
猛は勇作から横取りした土地を落札額の十倍で譲ってもいいと勇作に持ちかける。入札のやり直しをさせるため、勇作はある計画をたてる。文彦を知人の出版社に紹介して、猛の糾弾記事を書かせようというのだ。すると、出版社から、三枝家崩壊の暴露記事を要求される。勇作と猛の泥沼の争いをやめさせるため、ひかるは猛を説得にいく。猛は二人だけで話をしたいから今夜アトリエに来てほしいという。その夜、勇作のもとに、何者かから「アトリエニイケ」という電報が届く。ひかるがアトリエで猛を待っていると、勇作が現れる。
【#49】
アトリエでひかると猛が密会していると思った勇作は、逆上する。猛はそんな勇作をあざ笑い、密告の電報を打ったのは自分だと打ち明ける。勇作は文彦に猛の中傷記事を書くようそそのかす。そのためには伝衛門を貶めることにもなるので、文彦は断る。すると、勇作は今まで文彦のために使った金を返してほしいと高圧的な態度に出る。金がなければ、友子を売ってでも作れと。友子は文彦に逃げようと訴える。これ以上友子に苦労させたくない文彦は、記事を書く決心をする。ひかるは記事を出させないよう勇作を説得するが、失敗。一方、猛は記事が出てもかまわないという。
【#50】
文彦の書いた三枝家の中傷記事が雑誌に掲載される。猛を悪者に仕立て、駅前の土地の入札を白紙に戻そうとする勇作だった。が、生前の伝衛門を知る多くの人たちから出版社に抗議が殺到し、勇作の目論見は失敗に終わる。いよいよ倒産の危機に直面した勇作は、猛に土下座までして土地を譲ってもらおうとする。猛は断り、以前勇作から受けた侮辱の言葉をそのまま勇作に返す。文彦は記事を書いたことで自己嫌悪に陥る。責任を感じた友子は遊郭に身売りする。その友子を何者かが助け、ひかるは猛だと直感する。そんなある日ひかるの体にある変化が……。
#51~#65
【#51】
ひかるが妊娠。勇作は有頂天になるが、文彦の何気ない言葉から、ひかるのお腹の子は猛の子ではないかと疑う。静子も、結婚して八年間妊娠しなかったひかるが、猛が帰ってきたとたん妊娠したことに、疑惑の目を向ける。一方、猛はひかるの妊娠を知り、激しいショックを受ける。が、勇作への復讐の手はゆるめず、検察に働きかけ勇作の汚職を摘発しようとする。猛は大河原商会へ乗り込み、取引を持ちかける。三枝の屋敷を差し出し、ひかると別れれば、勇作の借金を肩代わりしてもいいと。勇作は怒りにふるえ、猛への嫉妬をますます募らせる。
【#52】
検察が、いよいよ勇作の逮捕に向けて動き出す。確実な証拠があれば、すぐにでも逮捕に踏み切れるというので、猛は絹を訪ねる。勇作の買収について記された伝衛門宛ての手紙を貸してもらおうと思ったのだが、絹は知らないという、妊娠したひかるのことを心配しているのだ。猛は絹に無断でこっそり手紙を持ち出す。秀子が、猛とはもう会わないでほしいとひかるに言いに来る。猛に利用されてもかまわないと言いきる秀子に、ひかるは何も言えず、猛に会わないことを約束する。まもなく、勇作を贈収賄の罪で逮捕するため、検察官が三枝の屋敷に押しかけてくる。
【#53】
勇作が逮捕される。ひかるは保釈金を作るために取引先や知人を駆け回るが思うようにいかない。疲れきったひかるに、猛が保釈金を差し出す。が、勇作の気持を考えると、ひかるは受け取るわけにはいかない。三枝の屋敷には債権者が押しかけ、金目のものは全て持ち出される。泣き崩れる静子を見て、ひかるは心を奮い立たせる。大河原の家のためにひかるは土下座して、猛に保釈金を融通してもらう。そして、そのことは勇作に内密にする。まもなく、勇作は釈放される。ひかるに心から感謝するが、秀子から、保釈金を出したのが猛だと聞かされ……。
【#54】
保釈金のことで嘘をつかれた勇作は、ひかるがますます信じられなくなる。さらに、ひかるが猛の位牌をまだ大切にしまっているのを見て、激しい嫉妬にかられる。理性をなくした勇作は、ひかるをののしりながら、そばにいた友子を無理矢理犯してしまう。友子の異変に気づいた文彦は、勇作につかみかかる。勇作はまったく反省の色がなく、逆に文彦を殴り返す。居たたまれなくなった友子は、屋敷から飛び出す。ひかるは勇作の卑劣な行為を非難する。勇作はひかるのお腹の子の父親は猛だろうと暴れだし、それをやめさせようとしたひかるは、はずみで階段から転げ落ちる。
【#55】
勇作ともみ合い、階段から転落したひかるは流産する。ショックを受けたひかるは、大河原の家を出る。自責の念にかられた勇作は、猛に三枝屋敷の権利書を差し出す。猛は権利書を持って絹のもとへ駆けつける。そして、ひかると結婚したい、と打ち明ける。絹は屋敷には戻らないという。人としての心を失った猛を許せないと。ひかるは猛のもとへいく決心をする。そして、勇作に別れを告げる。全てを失くした勇作はひかるに謝罪し、ひかるの幸せを祈る。そこへ、ナイフを握った秀子がやってくる。猛に捨てられた秀子はひかるを道連れに死のうとする。
【#56】
猛に捨てられた秀子が、手首を切って自殺を図る。幸い命に別条はなかったが、ひかるは秀子を追いつめた猛を非難する。が、猛は全く良心の呵責を感じず、積年の恨みを果たし終えた喜びにひたる。ひかるは猛が昔とは別人になってしまったのを思い知らされ、絶望的な気持ちになる。その夜、ひかるは三枝の家に移った猛のために心づくしの夕食をこしらえる。猛はひかるの態度に納得のいかないものを感じながらも、幸せな気持ちに包まれる。深夜、安らかな寝息を立てて眠る猛の部屋に、ひかるは灯油を撒き始める。そして、マッチを取り出し、火をつける……。
【#57】
猛に失望したひかるは、屋敷に火をつけて、猛と無理心中しようとする。間一髪で絹がひかるを止め、猛にも復讐の愚かさを説く。自分の間違いに気づいた猛は、号泣する。翌朝、猛は病室の秀子を見舞う。静子も勇作も猛を追い返そうとするが、秀子は喜ぶ。猛は秀子に改めてプロポーズする。ひかるは勇作のもとへ帰る。勇作は、ひかるがいれば何もいらない、と万感の思いをこめて、ひかるを抱きしめる。それからまもなく、秀子の退院の日がくる。手伝いに駆けつけたひかるに、秀子は、心の中で猛を思うのもやめてほしい、と鬼気迫る様子で、誓いを立てさせる。
【#58】
ひかるが勇作のもとに戻って1ヵ月。勇作は大河原商会の再建に励み、ひかるは静子の旅館を手伝っていた。猛は秀子と三枝の屋敷で新しい生活を始めていた。相変わらず自堕落な毎日を送る文彦の前に、友子が突然、現れる。文彦の子を妊娠したという。が、文彦はレイプ事件を引き合いに出し、勇作の子どもだと主張。嫌がる友子を連れて、勇作に慰謝料の請求に行く。勇作は自分の子どもだという証拠はないと突っぱねる。その日の話し合いは平行線に終わる。ひかるは友子が自分に何か言いたそうな表情をしたのが気にかかった。
【#59】
文彦が脅迫まがいのやり方で勇作に慰謝料を請求する。あくまでも友子のお腹の子の父親を勇作だと決めつけ、友子にもそう言い聞かせる。ひかるは勇作に言われて、絹に相談する。猛も心配して来てくれる。勇作と文彦の板ばさみになって苦しむひかるに、猛が必要な金を用立てると申し出る。ひかるは断るが、それを知った秀子は心穏やかでない。そんなとき、ひかるは静子から思いがけないことを言われる。友子の子どもを引き取りたいと。そして、ひかるが反対して家を出るなら、勇作と友子を一緒にさせてもいいという。
【#60】
友子の子を引き取りたいという静子に、ひかるは愕然とするが、勇作が友子との生活を望むなら自分は身を引いてもいいと考える。静子は、ひかるは猛とよりを戻すつもりなのではないかと邪推して、秀子に忠告する。ひかるは友子の本当の気持ちを確かめにいく。お腹の子は文彦の子だ、と泣きながら訴える友子。絹は自分勝手な文彦を責める。逆上した文彦は、絹を殴りつける。その夕方、友子が書き置きを残して姿を消す。秀子が友子を見つけて、三枝家の階段から友子を飛び降りさせようとする。ひかるが駆けつけ友子をかばい、猛もひかるの味方をする。
【#61】
ひかるは友子とお腹の子を守るために、友子を大河原の家へ連れて帰る。勇作は困惑するが、後継ぎができたと思い込んでいる静子は大歓迎する。その頃、猛は復讐をやめるよう文彦を説得していた。必要な金も用意すると申し出るが、文彦は聞き入れない。翌日、ひかるは絹を病院へ連れて行く。文彦が友子を迎えに来る。友子は喜ぶが、文彦がまだ子どもことを認めてくれないので、帰るのを拒否する。その夜、思いつめた様子のひかるが、猛を訪ねてくる。絹に何かあったらしい。ひかるの腕をつかんで外へ行こうとする猛を、秀子が止める。
【#62】
秀子の止めるのもふりきって、猛はひかるとアトリエへ向かう。ひかるは絹が白血病におかされ余命1ヵ月であることを打ち明ける。猛は絹を三枝家の屋敷に引き取らせてほしいと申し出る。翌日、ひかるは病気のことは隠して、絹に猛の申し出を伝える。ひかるの切羽詰まった様子から真実を察した絹は、素直に三枝の家へ移ることを承諾する。その日のうちにひかるは絹を猛のもとへ連れて行く。見るからに仲のよさそうな三人に嫉妬した秀子は、絹に思わず病名を告げてしまう。絹は取り乱さず、しっかりと自分の運命を受け止める。そして、訪ねてきた文彦に「遺言」を残す。
【#63】
死期の迫った絹から、友子を大切にするよう言われた文彦は、大河原の家へ押しかけ、友子を連れ戻す。そして、一生かけて友子を守ることを誓い、二人で再出発のために旅立っていく。秀子は絹に病名を告げたことで罪悪感に苦しんでいた。いつも秀子を追いつめてしまう自分に責任を感じた猛は、秀子に別れをきりだす。秀子は再び嫉妬に狂い、勇作に、猛とひかるは一緒になるつもりだと忠告する。勇作は三枝家へ乗り込み、猛に飛びかかる。二人は激しく取っ組み合うが、そのとき絹の容態が急変。絹は伝衛門を呼びながら、静かに息を引きとる。ひかるは勇作の胸で泣きじゃくる。
【#64】
絹の葬儀が終わり、ひかるは勇作との生活に戻る。猛と秀子の仲を修復するため、ひかるは秀子に猛との正式な結婚を勧め、婚姻届を取り寄せる。猛が持ち株の全てを勇作にさし出し、何もかも捨てて村から出ていくという。そして、ひかるには話さないよう口止めをする。その夜、ひかるが偶然、猛が置いていった株を見つける。ひかるに問い詰められ、勇作は猛が明日、出て行くことを告げる。ショックを受けるひかるに、勇作は猛のもとへ行くよう促す。ひかるは三枝の家へ駆けつける。すると、秀子が悄然として、猛が出て行ったことを告げる。
【#65】
猛は村を出る前に懐かしいアトリエを訪れる。そこへ猛が村を去るのを知ったひかるが猛を追いかけてくる。そして行かないでほしいと訴える。が、猛は自由に生きたいという。ひかるは猛と一緒に生きていくことに決め、二人で出ていこうとするが、そこに秀子が現れる。猛への愛で自我を失った秀子はひかるにこれまのうらみをぶつけ、とうとう銃を向ける。しかし、その弾は、ひかるをかばう猛の身を貫いてしまう。意識が遠のきながら猛は、いつも胸にあった海に思いをはせる。光輝く海で永遠の愛を誓う二人。
――それから5年後の夏。勇作と別れ三枝の屋敷で一人暮らしながら農業を生業とするひかるのもとに、作家として成功した文彦が友子と息子の光彦と共に、遊びに来る。そこへ、今は友人として付き合っている勇作も現れ、ひかるたちは楽しいひとときを過ごす。仏壇にあった貝殻に興味を抱いた光彦にひかるは、生涯忘れることの出来ない運命で結ばれた恋人・猛との出会いの物語を始めるのだった。(終)